病気不安症
身体症状がないか、あるいは非常に軽微なものであるにもかかわらず、自分が重篤な身体疾患にかかっていると信じ込み、情動が不安定になったり社会機能の低下をきたします。発生率に男女差はなく、20代から30代に多いです。
病気不安症は、かつては心身症と呼ばれていました。しかし精神科診断の分類の検討や整理に伴い「身体症状症とその関連疾患」の内の1つとして、名称が改められています。
病気不安症は、かつては心身症と呼ばれていました。しかし精神科診断の分類の検討や整理に伴い「身体症状症とその関連疾患」の内の1つとして、名称が改められています。
症状
身体的な症状が全くないか、ちょっとした身体的違和感程度のもの(少し頭が痛いなど)、または正常な身体活動(心臓の拍動など)に対して異常である、と認識し、不安感が募り容易に恐怖心に転じます。病院を受診して異常がない、と言われても納得しない、ということがありますが、反対に病院への受診を恐怖心から避けることもあります。
病気不安症の症状は以下の通りです。- 身体症状は存在しないか、あるいは非常に軽微にもかかわらず、自分は重い病気にかかっている、もしくは重い病気にかかるに違いない、と思い込んでいる。
- 健康に対する不安感が強く、それは容易に恐怖心に転じる。
- 繰り返し体を調べ上げるなどの過度な健康関連行動をとる。
- 病院での受診を避ける。⇒「病気だと言われたら怖い」から
最近はインターネットで情報収集が容易になったことから、病気のことを徹底して調べ上げ、どんどん確信を強める人は多いです。その場合には「心配がいらない」というポジティブな情報はむしろ排除し、「このままだと危険です」といったような危機感をあおるような情報や、擬似科学的な情報を積極的に取り込み続ける傾向が見られます。そのため他者の健康状態の悪化や、今まで経験したことがない身体感覚にも過敏に反応します。
原因
しばしば近親者や自分自身の重い病気の後に発症することがあります。心理的には身体的な不快感に対する感受性が高く、身体感覚に対する認知の仕方が過剰になっています。その根底には、無意識に何かからの逃避を望んでいることがあります。身体に対する不安感を通して、自分の葛藤を表現している、ということです。しかしこの表現方法は多大な苦痛を伴うため、葛藤を表現する手段としては極めてマイナスが大きいものです。
治療
治療上、症状に心理的な要因が作用していることを主治医と共有していくことが、非常に重要です。心身相関への理解を深めつつ、その人が持つ無意識的な葛藤、「自分が病気である、と信じ込まなければならない理由」について理解を深めていくことが、病気不安症の治療の上では重要です。
また、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)をはじめとした抗うつ薬も、この病気には有効であることが多いです。依存性もないため、副作用などに注意しながら使うと治療の助けになります。
改善に向けて
病気不安症は非常に慢性化しやすい疾患です。自分の苦しさをわかって欲しいのに、誰にもわかってもらえないという経験を繰り返すうちに、不安感や恐怖心が強化されていきます。特にドクターショッピングは症状を強化しやすい行動として知られています。信頼のできる一人の主治医と、早めに治療を始めることが改善のための近道です。