適応障害

適応障害とは、ストレス状態によって引き起こされる気分や行動の症状によって、その人の生活が阻害される状態(不適応状態)をいいます。ストレスをもたらす状況がなくなればそれだけで改善することもあります。しかし現代社会においてはストレス状況を改善できず、そのまま生活を送らざるを得ないことも多いため、治療を要することが多いです。
症状

憂うつな気分や意欲の低下、ネガティブ思考、不安感、焦燥感、緊張感といった気持ちの変化が見られます。また頭の回転が悪くなってしまったような気がする、といった「ブレーキがかかったような」状態になったり、睡眠や食欲の不調が現れることもあります。ご存知の方はお気付きかもしれませんが、適応障害の症状は実はうつ病の症状によく似ています。両者の違いは「ストレス要因が取り除かれたときに、それだけで症状が改善するかどうか」です。

原因

さまざまなことがストレス要因になり得ます。一般的にはストレスは「辛いこと」「苦しいこと」によって生み出されると考えがちですが、そうとは限りません。仕事でなかなか成果が出ずに上司から嫌味を言われ続け、それがストレスになる場合もあれば、成果を出し続け上司からの期待が大きい人が、実は内面的には追い詰められた気分になっており、ストレスを蓄積している、ということもあります。昇進や新居への引っ越し、といった喜ばしいことでも、そこからくる多忙さで心身が疲れ果ててしまい、適応障害を発症することもあります。
全てのことが得意な人などおらず、どんなことが苦手かは人によって全く違います。なので適応障害は、誰にでも起こりうる状態と言えます。

治療

治療の基本は、ストレス要因の除去です。環境の調整を行い、取り除けるストレス要因を取り除くことは、適応障害の改善に強力に作用します。例えばパワハラ上司から距離を取るために会社の人事部に相談をする、DVを振るう恋人と距離を取るために友人に協力してもらうなど、ストレス状況の外部にある力を借りることも有効と思います。
しかしストレス状況の改善に即座に取り組めない場合も多々あると思います。協力者が見つけられない、現在の仕事や生活のスタイルを急に変えることが難しい、などの場合です。そこでストレス状況を抱えながらも、そのストレスに対抗していけるだけの底力を取り戻していく必要があります。このために、お薬を使うことが治療の選択肢に入ることもあります。
こころの底力をある程度回復することができれば、そのストレスに対抗する方策を考え、実行することも容易になります。私は治療に際して、「ゆれている心の土台をしっかり固めて、その上でストレスに対処していきましょう、土台がしっかりしていないと、対処もうまくいきません」という説明の仕方をすることがありますが、お薬はうまく使いこなせば、土台をしっかり固めてくれる強力な道具になります。
薬物療法についてはうつ病に準じます。うつ病/大うつ病性障害のページの、治療の項目を参照にしてください。

改善に向けて

適応障害の方にお話を聞くと、環境の調整に関して「そんなことはできない」と感じていらっしゃることが多いようです。一人で悩み苦しんでいると、どうしても物事の捉え方や見え方が狭まり、「どうせうまくいかない」などと悪い方に考えがちですが、実はこれも「ネガティブ発想」という、症状の一つです。しかし思い切って他者に相談ができると、自分では考え付かなかったやり方が発見できることもあります。

精神科医は家族や友人、仕事や学校関係の人と違い、あなたにとっては「普段はあまり関係がない人」です。あまり関係がない人だからこそ、色々と相談に乗りやすい、ということもあるので、お困りであれば是非ご相談ください。